【重要なお知らせ】
「自分の考えた考察」と称して私の考察記事本文をただ読み上げるだけの配信を行ったyoutuberがいました。
私の考察記事を動画で紹介してくださること自体は構いません。むしろ歓迎しています。
ただし「自分が考えたもの」として発表することは絶対にやめてください。
私の考察記事を動画内で扱う場合は参考URLとしてこの記事のリンクを必ず貼ってください。(こちらの許可を得る必要はありません)
この記事のURL:
http://lofear.game-ss.com/kousatu/yashiki
このページでは2016年版レイヤーズオブフィアー(Layers of Fear)の舞台である屋敷について色々考察します。
ストーリーについての考察はこちらの記事をご覧ください
→
レイヤーズオブフィアー(Layers of Fear)のストーリーを考察する
画家の置かれた状況をおさらいする
屋敷のことを考察する前にまずは画家の過去をおさらいしよう。画家の過去は以下である。
・画家として名声を得ていたが、落ちぶれてしまった
・妻と結婚したが、妻は火災事故で重傷を負い、後に自殺した
・画家には幼い娘がいたが、家庭裁判所の裁定により引き離されてしまった
・画家はアルコール依存症に陥り幻覚を見るようになっていた
これらを経て「レイヤーズオブフィアー」のゲームは始まる。
画家としての地位を失い、妻に先立たれ、娘から引き離され、独りぼっちになった画家が「画家としての地位」「美しい妻」「家族」のいずれかを取り戻すために絵を描くのがこのゲームだ。
プレイヤーの足音を聞けばわかるように、プレイヤーは画家自身である。(足音は義足のそれである)
したがって、プレイヤーは画家の見る世界をそのまま体験することになる。
変容する屋敷やあり得ない怪奇現象は、アルコール依存症の画家が見ている幻覚である。
画家の幻覚の例としては「ネズミ」が挙げられる。
画家は屋敷内に出没するネズミに激おこだが、実はネズミは実在しない。
(ステップ5の妻の日記)
「あの人はまたネズミにかかりきり。私は一度も見た覚えがないけれど、あの人ったら私の話も聞かずに、家中に無数のネズミ獲りを仕掛けた」
(プロローグのネズミ駆除業者の手紙)
「お宅の調査に伺った弊社従業員は皆、げっ歯類による被害の痕跡が一切認められないことを確認しております」
妻も業者もネズミを見たことがないという。
ネズミを見たことがあるのは画家だけだ。
画家が正気ではないことは、彼が仕掛けた罠やネズミのスケッチなどからも窺える。
プロローグで見られる病的な量のネズミ捕り。
この量は尋常ではない。
数あるネズミスケッチの一部。(ステップ3)
「体をかじり掘る奴ら 私を食い物にしてやがる」
ドラえもんじゃあるまいし、いくらなんでもネズミが本当に画家の身体を齧り掘るわけがない。
しかし幻覚に悩まされている画家は「本当にネズミが体をかじり掘っている」と思ってしまうのである。
屋敷内の虚構と現実を分類する
画家が幻覚に悩まされている状態にあることを押さえた上で、ゲームに出てくる物の何が現実で何が幻覚なのかを押さえていこう。
ゲーム内は(屋敷内は)「画家の幻覚」「実際に起きたこと」「画家のひとりごと」で構成されているように思われる。
【画家の幻覚】画家の妄想だとかそういった類のもの、現実ではない
・異常な数の部屋
・起きまくる怪奇現象
・ちょいちょい出てくるネズミ
・襲って来る妻
・ちょいちょい登場する娘(を象徴する人形)
【実際に起きたこと】画家の幻想ではなく本当に起きたこと、現実
・アイテムとそれについているボイス
・手紙や診断書
・妻の日記
・写真
【画家のひとりごと】
・壁の文字
・ネズミのスケッチ
分類するとこの3つになるのではないだろうか?
以下それぞれを考察していく
本物の部屋と幻覚の部屋
レイヤーズオブフィアーには「プロローグ」「ステップ1~6」のステージがあり、おびただしい数の部屋が登場するが、実在する部屋は以下だけである。
1F大広間、アトリエ、キッチン、バス&トイレ、物置、地下室、2F大広間、寝室、子供部屋、書斎
いわばプロローグでプレイヤーが歩き回る屋敷が「現実の屋敷」であり、それ以外の部屋は画家が作り出した幻想にすぎない。
エレベーターも長い廊下も実在しない。
現実世界の部屋は各ステージのラストステージを担っている。
・ステップ1…キッチン
・ステップ2…寝室
・ステップ3…地下室
・ステップ4…子供部屋
・ステップ5…書斎
・ステップ6…バストイレ
ステップ6は名目上はバストイレが最後の部屋なのだが、その後最終決戦に突入。
最終決戦でもやはりこれらの部屋が登場し、それぞれの部屋からチェッカーの駒一つずつを手に入れることになる。
各ステージの最後、さらに最終決戦が「現実の部屋」になっているのは、幻想世界に溺れた画家が現実と対峙しなくてはいけないと無意識に思っているから…と考えることもできるが、ここでは触れないことにする。
(そうだったら面白いし涙ぐましいことですよね)
おびただしい数の部屋を作り出したのは画家自身。
それを示唆するものが、実はゲーム内に出てくる。
上はステップ1の隠し部屋に出てくるミニチュアである。
(詳しくはこちらの記事をご覧ください →
2周目から出現する部屋)
たくさんのミニチュア家具のパーツ、廊下と部屋、金槌。
見るからに「製作途中」といった感じだ。
この部屋には他にもバーナーや腐食剤などミニチュア作成のための道具が置いてあるのだが、
注目すべきは家具のパーツがどれもこれもゲーム内に出てくるものと全く同じということだ。
ソファ、ベッド、電気スタンド、地球儀、絵画、ゲームをプレイした人間ならどれも見覚えがあるはずだ。
ここだけ見るとゲーム制作会社によるメタネタのようにも思われるが、この部屋に置いてある画家のメモを見るとそうではなさそうだ。
「私はおかしくなっているのか!?」
このメモは何重にも扉が重なった引き出しに厳重に仕舞われている。
この部屋に入ったプレイヤーなら「いやそんなん隠さんでも知っとるわ!」とズコーとなるところだが(この部屋は一度クリアしないと出現しない)、恐らくこの一言を厳重に仕舞うことに意味があるのだと思われる。
厳重な扉にしまっているのはきっと「大切な秘密」だからだ。
そもそもこの部屋は隠し部屋、この部屋にある物はすべて「大切な秘密」だ。
ゲームクリア後のプレイヤーに明かしたい大切な秘密、それは
「登場する無数の部屋は全て、おかしくなった画家が作り出しているものだよ」ということだ。
さしずめこの部屋は舞台装置の種明かしといったところだろうか。
画家は今もこの隠し部屋で新しい部屋を制作し続けているのかもしれない。
屋敷に出現する妻について考察する
屋敷に登場するものは部屋を含め、ほとんどが画家の作り出した幻覚である。
とすると、たびたび登場する妻も画家が作り出した幻覚と考えた方が自然である。
もしも登場する妻が幽霊や物の怪の類で、画家を恨んで襲って来るのだとすれば、画家が死なないのは不自然だ。
ゲーム内では画家は何度妻に襲われても死ぬことはなく、気絶するだけで済んでしまう。
しかし妻が画家が作り出した幻覚だとするのなら、画家が何度妻に襲われても死なないのにも合点がいく。
この先は推測になるが、妻が死んだ後、画家は恐らく妻の日記を読んでいる。
家族が遺品を整理をするのは普通のことだから、画家が妻の日記に目を通したとしても何らおかしいことはない。
ゲーム内に出てくる手紙や資料は基本的に画家が現実世界で目にしたものなので、妻の書いた日記も画家が目を通した可能性は高いと思われる。
妻の日記は画家への強い憎しみで溢れていた。
上はステップ3の妻の日記である。
「どうして私が、こんなひどい思いをしなければならないの。それでも私は良き妻として、夫の幻想を現実にすることに決めた。私を怪物だと思っているなら、
お望み通り怪物になってやるわ」
上はステップ5に出てくる妻の日記。
「天にまします我らが神よ、彼が頭をかち割り、腐った脳みそをぶちまけんことを。彼がガラスで手首を切り、赤い胆汁をあふれさせんことを。彼が吐しゃ物を詰まらせ、私たちに平穏をもたらさんことを。それが叶わないなら、私はいつか勇気を振り絞り、階段をかけ下りて自ら彼に止めを刺します」
簡単に言うとステップ3の日記は「お望み通り怪物になってやるわ」、ステップ5の日記「画家がめちゃくちゃ苦しんで死にますように。そうじゃなかったら私が殺します」である。
妻が画家に相当な憎しみと殺意を抱いていたということが十二分に伝わってくる文章である。
恐らくこの妻の日記を読んだせいで、「自分を憎んだ妻が怪物となって自分を殺しに来る」イメージが彼の精神世界に刷り込まれ、本当に怪物の妻を脳内に作り出してしまったのではないだろうか。
お望み通り画家の精神世界で怪物になってしまった妻
画家は妻が自分を殺したいほど憎んでいることを知っていた。
だから自分の作り出した屋敷の中に怪物の彼女を登場させ、何度も自分を殺させたのである。
しかし妻の日記は画家への憎しみだけが書かれているわけではなかった。
妻の家族に対する愛情や事故に遭ってからの苦悩もそこに綴られていた。
屋敷内に現れる妻は常に憎悪に満ちているわけではない。
妻がすすり泣く姿を我々プレイヤーは幾度となく見ている。
すすり泣く妻の姿は痛ましく、どちらかというと無力な被害者のように見え、とてもこちらを襲ってくるようには見えない。
これは画家が妻を傷つけ泣かせてしまったことを自覚しているからではないだろうか。
屋敷にこだまする声が恐ろしい怪物の咆哮ではなく、悲しいすすり泣きなのは、画家の中に眠る良心の呵責の表れなのかもしれない。
「あなたの父親が成り果てたものが憎い。それでも私は変わらずあの人を愛し、憐れんでる」
(ステップ6の妻による娘宛ての遺書の一部)
妻は画家を強く憎んでいた。
しかしそんな画家でも妻は変わらずに画家を愛し、憐れんでいると述べた。
たとえ自ら命を絶つ直前であってもその気持ちは変わらなかった。
恐らく画家はこの遺書にも目を通しているのではないだろうか。
上は妻エンドで読める画家から妻への手紙である。
「君はどれだけ苦しんだことだろう。私はもっと君を支えるべきだった。もっと気に掛けるべきだった。もっと君に尽くすべきだった。君にひどい言葉を投げつけたことが、自分でも信じられない。きっと私は良き夫にも父親にもなれない人間なんだろう」
「夢を失った今、せめて君に相応しい愛と同情を込めて君に尽くせるよう、できる限りのことをしようと思う」
画家は自らが作り出した妻の妄想に幾度となく襲われる。
だが画家はそんな妻に対して一切反撃しない。
それは画家の方も、怪物に成り果てた妻を憎く思いつつも変わらず妻を愛し、憐れんでいたからかもしれない。
壁の文字について考察する
壁の文字は簡単に言えば「画家のひとりごと」である。
画家の心情をそのまま表現するようなものもあれば
「トラウマ的回想」(ステップ3)
画家自身へのアドバイスもある
「覚悟を決めろ!」(ステップ2)
自分の才能を認めなかった者たちへの怒りもある
「バカめ」「マヌケども」「愚かな奴ら」「恩知らずども」「無知な連中」(ステップ3)
飼い犬への言葉もある
「いい子だ」(ステップ2)
そして自分を責め立てるような言葉もある
「酔っ払い」「身勝手」(ステップ4)
メモとは違い、文章にならない画家のひとりごとが存分に書き散らされている。
アドバイスの中には妻を無視しろという内容のものある
「彼女は無視しろ」(ステップ4)
これは「画家エンド」を目指す自分へのアドバイスであると思われる。
(妻に襲われた場合は画家エンドに到達できない可能性が高い)
妻や娘に対してだと思われる辛辣な発言もいくつかあるが、画家の精神は非常に不安定な状態にあり、壁の文字は愛情、憎悪、内省、攻撃の入り乱れた一貫性のない内容となっている。
余談だが、壁の文字は「現実にある部屋」には一切登場しない。(アトリエを除く)
画家のひとりごとは現実の部屋では無効となるのだろうか?
色々と考えてみると面白いかもしれない。
ウィジャボードの番号について考える
恐らく多くのプレイヤーが苦戦したであろうステップ6のウィジャボード。
同じ部屋にある画家の手紙にヒントが書いてある。
「さっそく今晩電話をください。詳細を詰めましょう。こちらの電話番号は363853…」
「363853…」までは書いてあるが、残りの番号は伏せられている。
多くのプレイヤーが「いや画家の家の番号なんか知らんがな」となったのではないだろうか。
(私はなりました)
しかし画家の電話番号はステップ5にて既に明かされているのである。
ステップ5の書斎天井ステージ。
次々現れる電話に番号を入力することでステージが進んでいく。
プレイヤーが入力させられる番号は全部で3つ。
登場する順番に紹介しよう。
363
853
354
これを出てきた順に並べると「363853354」となる。
ヒントとなる画家の手紙の番号「36385」と見比べると、前半が完全に一致する。
つまり「363853354」は画家の家の電話番号で確定である。
レイヤーズオブフィアーには番号を入力する場面が何回か出てくる。
しかし多くの数字はランダムである。
ステップ1にて指輪の金庫を開ける時の番号。
「485」「548」「854」のランダムである。
こちらはステップ2のサトゥルヌスの金庫の番号。
こちらも「729」「319」のどちらかのメモがランダムで出現する。
こちらはステップ5のあみだくじ
「CAT」「DOG」「RAT」の3バージョンがあり、それに伴って数字が変わる。
多くの番号がランダムなのに、ウィジャボードの番号「363853354」だけが固定なのである。
しかもこの番号は画家の屋敷の電話番号。
何故よりにもよって電話番号なのだろうか?
前述したとおり、ゲームの舞台となる屋敷は画家が作り出した世界である。
屋敷の中にある物やそこで起きる現象は、画家の精神状態が色濃く反映されたものだ。
電話番号は、画家の精神に深く刻まれたトラウマにかかわるものなのである。
才能溢れる美しい妻と結婚し、娘も授かり、画家としての地位を築き、順風満帆だった画家。
しかしその幸福な日々は、ある日舞い込んだ一本の電話で終わりを告げた。
「もしもし? ええ、私です。何?! 火事がどうかしたって? そんな…彼女は無事なんですか…?! どこの病院です?! すぐ行きます!」(ステップ3)
画家が受けたのは妻がデパートの火災事故に巻き込まれたという知らせだった。
重症を負った妻は全身の自由が利かなくなり、その美しい美貌を失った。
妻の精神は当然病み、夫婦仲は上手くいかなくなってしまう。
画家も美しい妻を失ったショックで思うように絵が描けなくなってしまった。
画家としての地位も失墜し、精神的にも金銭的にも追い込まれた画家は、酒に溺れて妻子に暴力を振るう始末。
その先に待っていたのは最愛の妻の自殺であった。
この電話は画家のいわば「トラウマ」そのものであろう。
(ステップ3の壁の文字「トラウマ的回廊」 この先に電話を受け取るイベントが待っている)
一本の電話は画家とって悲劇の始まりであった。
この電話を受け取った瞬間、幸福に満ちていたはずの画家の世界は大きく変容してしまった。
画家にとって、この瞬間はとても忘れられるものではない。
悲劇の引き金を引く番号「363853354」は、この狂気に蝕まれた精神世界の中では大きな意味を持つ。
尚、ウィジャボードにこの電話番号を入力すると、鍵のかかっていた戸棚が開き、一枚の写真が手に入るようになる。
その写真がこれだ。
仲睦まじくひとときの逢瀬を楽しむ男女の写真。
電話がかかってくる前の時間、画家が大切に仕舞っておきたかった幸福の日々がそこにあった。
写真の中では、美しく健やかだった頃の妻が変わらぬ笑みを画家に向けている。
(※以上は管理人個人の考察であり、公式設定ではありません。
このページを作成するにあたり、自分でプレイするだけでなく、いくつかの攻略動画や実況プレイ動画も参考にしました)